その日、大学のサークル仲間である健太、拓也、美咲、彩香の4人は、ドライブがてら関東地方にある有名な心霊スポット、「〇〇トンネル」へと向かっていた。
「ねえ、本当にここなの?なんか、昼間なのに薄暗くて気持ち悪いんだけど……」
助手席の美咲が、不安そうな声を上げる。
「大丈夫だって、美咲。俺たちがついてるから」
運転席の健太が、いつものように明るく答える。
「そうそう、それに、こういう場所って夜に来るから怖いんじゃないの?昼間なら全然平気だって」
後部座席の拓也も、健太に同意する。
「でも……」
美咲はまだ不安そうだったが、彩香が
「まあまあ、せっかく来たんだし、ちょっとだけ探検してみようよ」
と、美咲の肩を叩いた。
4人は車をトンネルの入り口付近に停め、懐中電灯を手に、トンネルの中へと足を踏み入れた。
トンネルの中はひんやりとしていて、昼間だというのに薄暗く、独特の不気味な雰囲気が漂っていた。
「うわ……なんか、本当に何か出そう……」
美咲が、身震いしながら呟く。
「ほら、美咲、怖がりすぎだって。何もいないよ」
健太が、美咲をからかうように言う。
しかし、その時、
「ねえ……何か聞こえない……?」
彩香が、声を潜めて言った。
4人は足を止め、耳を澄ませる。
すると、確かに、何か音が聞こえる。
それは、まるで女のすすり泣きのような、悲しい音だった。
「ひっ……!」
美咲が、悲鳴を上げそうになるのを、彩香が慌てて口を塞ぐ。
「しっ、静かに!誰かいるのかもしれない」
拓也が、周囲を警戒しながら言う。
4人は、音のする方へと、ゆっくりと歩を進めた。
すると、トンネルの奥の方に、人影が見えた。
「誰かいる……?」
健太が、声をかける。
しかし、人影は、何も答えない。
4人が近づいていくと、それは、白いワンピースを着た、長い髪の女だった。
女は、うつむいていて、顔が見えない。
「あの……大丈夫ですか?」
彩香が、恐る恐る声をかける。
すると、女はゆっくりと顔を上げた。
その顔は、真っ白で、目だけが異様に大きく、口は耳まで裂けていた。
「きゃあああああ!」
美咲が、悲鳴を上げた。
女は、ゆっくりと立ち上がり、4人に向かって歩き始めた。
4人は、慌てて逃げ出した。
しかし、女は、信じられないほどの速さで、4人を追いかけてくる。
「ひっ……!助けて……!」
美咲は、泣きながら叫ぶ。
その時、健太が、
「くそっ、こうなったら……!」
と言って、懐中電灯を女に向かって投げつけた。
懐中電灯は、女の顔に当たり、女はよろめいた。
その隙に、4人はトンネルから脱出し、車に乗り込んで、必死でその場を後にした。
車の中で、4人は誰も何も話せなかった。
ただ、恐怖で震える美咲を、彩香が優しく抱きしめていた。
しばらくして、健太が、
「……なあ、あれ、本当に人間だったのかな……?」
と、呟いた。
その言葉に、他の3人も、ただ黙って頷くしかなかった。
その日以来、4人は二度と「〇〇トンネル」には近づかなかった。
しかし、あの白いワンピースの女の姿は、4人の脳裏に焼き付き、決して消えることはなかった。